楽しいからこそ伸ばせる子供の能力
練馬校のフリースクールi-schoolでは、「インカの黄金」や「街コロ」「カタン」など、たくさんのボードゲームを用意しています。リトル・ダヴィンチ理数教室でも、様々な算数ゲームを取り入れていますが、「ロボットタートル」や「コリドール」などのボードゲームも行っています。
戦略性や推理性などから大人もはまるボードゲームですが、コロナ禍の巣ごもりによってさらに人気が高まり、今、日本でちょっとしたブームになっています。10年前は1万人程度だったボードゲーム愛好家の数は、5年前に10万人、そして2022年には27万人にまで膨れ上がったと言われています。東京都でボードゲームを遊べるカフェやプレイスペースは現在確認できるだけ130点を超えているそうです。
矢野経済研究所は、日本ではボードゲームはコロナ禍のステイホーム需要による伸びは+17%にとどまり、その後は微減傾向となっていると指摘していますが、市場調査会社SDKI Inc.(本社:渋谷区)は、昨年2024年と2036年の予測期間を対象とした世界規模の「ボードゲーム市場」に関する調査を実施し、ボードゲーム市場規模は 2023 年に約 93億米ドルと記録され、2036 年までに市場の収益は約228.9億米ドルに達すると予測しています。さらに、市場は予測期間中に最大 10.67% の CAGR (年平均成長率)で成長する態勢が整っているとしています。
SDKI 市場調査分析によると、市場は教育的価値の増加により大幅に成長すると予想されています。多くのボードゲームは教育的であり、批判的思考、問題解決、戦略的スキルを促進する効果があるため、貴重な学習ツールであると考える親や教育者にとって魅力的であると。また、ボードゲームをプレイすることは、論理的思考の向上と言語作業記憶の向上に直接関係しており、言語スキルや感情スキルなどの社会スキルを向上させることが証明されていると分析しています。日本ボードゲーム教育協会は、「ボードゲームの活用が子どもの豊かな学びた、につながる」と考え、ボードゲームが持つ「学びの要素」について研究しています。その中で、子どもがボードゲームで遊ぶことによって身につく力には、「論理的思考力(システム思考・情報処理力等)」「コミュニケーション能力(リーダーシップ・共感力等)」「創造力(発想力・想像力等)」の3つがあると考えています。実際、最近では、勝敗を重視するのではなく、コミュニケーション型や協力型のゲームが増えてきています。
ボードゲームやカードゲームなどコンピューターを使わずに、相手の顔を見ながら遊ぶゲームを総称して「アナログゲーム」と呼ばれています。私が師事しているアナログゲーム療育アドバイザーの松本太一氏(東京学芸大学大学院障害児教育専攻卒業)は、発達心理学者ジャン・ピアジェの「認知発達段階論」や心理学のモーツァルトと言われたレフ・ヴィゴツキーの「最近接発達領域」などの理論を基にゲームの選定や指導の方法を説いています。この二人の心理学者は、Truthの教育理念に深くかかわる心理学者です。
ピアジェの提唱する発達段階は、①0歳~2歳:感覚運動期(五感の刺激を求め認知の枠組みの同化・調節を繰り返す) ②2歳~7歳:前操作期(物事を自分のイメージを使って区別・認識できるようになる) ③7歳~11歳:具体的操作期(論理的思考が発達し、他者の立場に立って行動できるようになる) ④11歳~:形式的操作期‘(知識・経験を応用し、結果を予測して行動や発言ができるようになる)の4段階。小学生に当たる③では、「他者視点の獲得」を重視しており、現実の人間関係で他者視点を得るのは難しいが、確固たる枠組みのゲームの中で繰り返し成功体験を積み、他者と関わる自信につなげることの大切さを挙げています。
また、「最近接発達領域」とは、「子どもが自力で問題解決できる現時点での発達水準と、他者からの援助や協同により解決可能となる、より高度な潜在的発達水準のずれの範囲」を意味します。要するに、「一人ではできないけれど、誰かと一緒ならできること」です。この領域に当たる課題であれば、子供は意欲的に課題に取り組み、発達すると説きます。
最近保護者の方から、ボードゲームをやらせたいけれども一人っ子なのでできない、兄弟姉妹と年齢が離れているのでできない、といった声を時々聞きます。アルゴ大会やトリンカ大会といった算数ゲームのイベントはあるのですが、他のボードゲームができる機会を作れればと思っています。